世界のアニマルラバーを虜にする
キリンと戯れる憧れの邸宅へ
ケニアの首都ナイロビ郊外にある「ジラフマナー」は絶滅危惧の野生のキリンと直に接することができる世界でも類をみないユニークなホテルだ。野生動物と触れ合う豪奢な館への旅は、忘れられない滞在となるはずだ。
マナーハウスとは、中世ヨーロッパにおける荘園(マナー)に荘園領主が建設した邸宅のこと。主にイギリスのカントリーサイドに多く、現在では高級ホテルなどに転用され、ラグジュアリー層を中心に世界的に人気が高い。ケニアの首都ナイロビ郊外ランガタにある「ジラフ・マナー」はかつて英国貴族たちがサファリライフを楽しむため、1930年代に建てられたマナーハウスを改装したホテルだ。570平方キロに及ぶ広大な原生林の中に平方キロの土地を所有しており、当時の英国貴族たちの暮らしを忍ばせる雰囲気が漂っている。しかし「ジラフ・マナー」が実にユニークなホテルとして知られているのにはもうひとつ理由がある。それはその名の通り敷地内でキリンを保護、飼育し、ゲストも直に触れ合えるという実に貴重な体験を提供してくれるからだ。人口430万人の大都市であるナイロビ中心部から車でわずかに分あまり。やがてサファリ特有のブッシュと林に囲まれた石造りの重厚な建物が見えてくる。「ジラフ・マナー」に到着したのだ。チェックインのためロビーへと歩いて行くと、すでに建物の向こうには、背の高いキリンの姿がいくつも見えるではないか。しかも柵や檻で囲まれているのではなく、自由に、そして優雅に敷地内を闊歩し、それどころか母屋に近づいて人間と触れ合うのも全く厭わないのだから、驚きだ。こんなホテルは世界に二つとないだろう。
ケニアで最も愛しい客室を訪ねて
ロバート・レッドフォードとメリル・ストリープによるアフリカを舞台にした映画「愛と哀しみの果て」を覚えている人はいるだろうか。原作はデンマークの女性作家カレン・ブリクセン。カレンは実際にケニアに世界的に知られるようになったのだ。「カレン・ブリクセン・スイート」はそんなカレンの生涯に敬意を評した「ジラフ・マナー」最上級のスイー年暮らし、その実体験を元に名作「アフリカの日々(原題Out of Africa)」を発表。映画公開時、すでにカレンはこの世を去トルームなのである。
113平米、ベッドルームの広大なスイートにはプライベートバルコニーが備えられており、手摺り越しにキリンと直で触れ合えることができる
大きなキングサイズベッドに身を横たえて眠りにつき、翌朝キリンの息吹で目をっていたが同作はアカデミー賞に輝き、カレンのケニアでの暮らしは一躍覚ます、そんなことも可能なのだ。
Afternoon Tea
英国式邸宅で幸せに触れる1日
「ジラフマナー」でのアフタヌーンティはやや遅めの16時から始まる。これは周囲が暗くなる前に森に帰る、キリンの夕食時間に合わせたタイムテーブルだ。ディナータイムにはキリンは現れないので、午後のアフタヌーンティがキリンに会えるその日最後のチャンス。仲良くなったキリンとしばし別れの前に、名残を惜しむように触れ合えるひと時。
「ジラフマナー」でのダイニング体験が他とは違うのはキリンとともに食事ができ、ゲストが直接キリンに餌やりができるところだ。ここに訪れるのはロスチャイルドキリン、別名ウガンダキリンと呼ばれる種類で、保護区内の森林にある寝床とマナーハウスを毎日行き来している。
キリンの食事は基本的に朝夕の回。ゲストは自由にキリンに餌やりができるのだが、ルールを守らないといけない。例えばキリンに与えていいのは、ペレットと呼ばれる専用の練り餌だけで一度に一粒ずつ。脚の長いキリンは人間が横に立つと不安になるので、餌やりは必ず正面から。大きな音を立てたり、急に動いたりするのも、キリンを撫でる時は必ずスタッフに確認してからと、厳格なルールが定められている。そうした基本的なマナーさえ守れば朝食時やアフタヌーンティの時間に、キリンに餌やりしながら共に食事を楽しむというダイニング体験が満喫できるのだ。
Break fast
キリンと共にとる朝食は宿泊客しか体験できない貴重なひととき。朝食の時間になるとキリンたちが森からマナーハウスへとやってきて、ダイニングルームの開いた窓からその長い首を突き出し、朝食をねだる光景がなんともユニークで可愛らしい。
また、プライベートバルコニーがある部屋に滞在すれば、キリンを眼下に見下ろしながら餌やりをすることができる。
Lunch
マナーガーデンでとるランチは、キリンが森に帰ったあとしばし静寂を楽しむひととき。キリンのおねだりを気にすることなく、ゆったりとした食事が楽しめる。
食事は英国風のミートプディングやワンプレートディッシュが人気。ガーデンには特大ブランコもあるので、朝夕にはブランコに乗ってキリンと触れ合える。
Dinner
サファリに宵闇が訪れる頃、マナーガーデンではロマンチックなディナータイムが始まる。キャンドルに火がともり、ライトアップされたトピアリーはアフリカの植生でありながら英国風の雰囲気満点。
地元産の新鮮な野菜や果物を使った料理は日本人の口にもあう。美味しい料理と過ごすディナーは、キリンと触れ合った1日を締めくくるのに欠かせない。
The unforgettable bucket list in the world Kiss & Hug with our giraffe
「ジラフマナー」は単にキリンと触れ合う施設ではなく、キリン保護のため様々な活動を支援しており、滞在したゲストは自動的に保護活動に貢献できる仕組みになっている。マナーハウスには1979年に設立されたアフリカ絶滅危惧野生生物基金=AFEWのキリンセンターが隣接している。AFEWの使命は絶滅の危機に瀕しているキリンの繁殖保護だけでなく、ケニアの子供達にいかに自国が野生動物の宝庫かということを教育することでもある。「ジラフマナー」のゲストはAFEWに寄付することで周囲に生息するキリンの保護のみならず、ケニア全土の野生生物保護プロジェクトに寄付することになる。
ここでは地上で最も背が高い動物を間近に観察することができ、またキリンも人間と交流するのが大好きだということが分かるのだ。キリンは好奇心旺盛で、おやつを期待してその長い舌を伸ばし、ペレットを実に美味しそうにほおばる。やがてキリンたちは食事も堪能したあと満足そうに森の奥へと帰ってゆく。時には仲良くなったゲストに特別に感謝の意を込め、鼻先や口をゲストの顔に近づける「キリンのキス」で挨拶してくれることもある。
これはなかなか見られない光景だが人間と動物の信頼の証だ。また、キリンの唾液には殺菌作用があるので「キリンのキス」とは単なる愛情だけではなく感謝の表現でもあり、人間を守りたいというキリンなりの思いやりの気持ちなのかもしれない。「ジラフマナー」への旅は、生涯忘れられないキキリンとの思い出を創造してくれるはずだ。