郷土愛と料理愛家族経営から溢れる
愛情に満ちたオーベルジュ
「フランス料理人が投票で選ぶシェフ」に選ばれたアルノー・ラルマン氏。彼が手がけるこのオーベルジュは、皆に愛され、認められてきた軌跡だ。
シャンパーニュ地方を代表するシャンパーニュメゾンを多く抱えるランス。パリから日帰りも可能なため、観光客も多い。そんなランスの郊外に位置しているのが、ランスで唯一の3つ星レストランを有するラシエット・シャンプノワーズである。2ヘクタールの敷地に伝統的な木組みの外観を持つメゾンであり、創業は1975年という歴史あるオーベルジュ。客室数は35室、現在、Relais & Chateaux のメンバーにもなっている。クラッシックなオーベルジュながらも、到着して、入り口で感じる印象は、非常にコンテンポラリーである。その理由は、弱冠28歳から総料理長の責を果たしている、アルノー・ラルマン氏の卓越したセンスにあるだろう。アルノー氏は2009年、にモダンでアーティスティックな内装へと大規模な改装を行い、インテリアの一つ一つにもこだわり、彼の繊細で現代的な料理のイメージを、館内にも表現したのだ。ラウンジやレストラン、廊下に至るまで、フランスのフィリップ・スタルクや、北欧ヴィンテージスタイルのノルの家具、バカラのシャンデリアなど、デザイン・コンシャスな空間が広がっている。
フランス郊外のオーベルジュという印象を一変させるモダンなインテリアと、広大な自然を絶妙にミックスした館内をみていると、新進気鋭な気概を感じる。
モダンなインテリアの中にも家族経営の温かみは残し、ゲストの居心地はとても穏やかだ。そして、バーラウンジには、アルノー氏の料理への無邪気な愛を感じるインテリアがあった。当レストランの創成期からの、ミシュランガイドとミシュランマン、ゴ・エ・ミヨガイドが全て並んでいるギャラリーだ。3つ星獲得時、彼はインタビューに対して、「ただただ嬉しい」と語っていたそうだ。料理に真摯な情熱と愛があるからこそ、ミシュランやゴ・エ・ミヨの評価も一際に嬉しいだろう。料理も空間も、まだまだ進化を続けていく、ラシエット・シャンプノワーズから目が離せない。
Balcony Suite
バルコニースイートは約80㎡の広さを持ち、使い勝手の良いデスクと、広いテラスがある。マッサージ機能付きのジェットバスも完備。また、ベッドルームの壁一面には巨匠ピエール・スラージュなどの絵画作品が飾られている。
Pool
木の香りがする室内温水プールは150 メートルの広さがあり、深さも十分で泳ぎやすい。周囲が緑で囲まれており、気候がよければドアが開放され、気持ちの良い空気が通る。ご要望があれば、プールに浸りながらシャンパンも愉しめる。
BAR
BARではシャンパンの幅広い選択肢はもちろん、ヴィンテージウイスキーも豊富だ。 グラスでクリュッグや高価なシャンパンもオーダーが可能。
父から受け継ぎ、変革を続けるフレンチの味
あるべきレストランの形がここにある
レストランを進化させ続けてきた、アルノー氏
料理への哲学と情熱の根源は何か
フランスにおいて史上最年少2つ星、シャンパーニュ地方唯一の3つ星、28歳でメゾン全体の責任者に就任・・・などと、アルノー・ラルマン氏の功績を挙げれば、枚挙にいとまがないが、もっとも讃えるべきは、亡き父の作り上げたこのメゾンの運営に精魂を捧げ、ここまで向上させてきたというその情熱だろう。1975年、アルノーの両親ジャン=ピエール氏とコレット婦人が、ランス市郊外にてラシエット・シャンプノワーズを創業。その後、1977年ミシュランガイド一つ星獲得。星獲得から10年後、アルノー氏の両親がシャトーを購入し、ラシエット・シャンプノワーズは現在のランス市郊外のタンクーに移転する。家業として、ラルマンファミリーが支え続けてきたメゾンは、今でもアルノー氏の実母や実妹がゲストをもてなし、奥様が一緒に厨房に入り盛り上げている姿が見られる。家業へのこだわり、一家で事業を支えるというこの姿勢は、現代の日本人が失いつつある様子に見え、見習うべき要素を随所に感じられる。シェフの名を冠したメインダイニング「A.Lallement」は1 階と2 階に分かれており、遠方から訪れ宿泊をするゲストと、レストランに訪れる近隣のリピーターでいつも満席である。
総料理長 アルノー・ラルマン氏
2014年に3つ星に選ばれたこのレストランでのディナーはガーデン前のテラスで、アペリティフと乾杯のシャンパンからはじまる。その後に、バカラのシャンデリアは煌く、ダイニングルームへと移動する。地元素材を活かした料理が提供され続けるが、特に目を引くのが手長エビだ。アルノー氏も自負するこの一品は、絶妙な焼き加減で柔からさと風味を残し、オリジナルのソースが絡んで極上の調和が舌の上で踊る。彼の料理のポリシーは、シャンパーニュのように「酸味が全体を支え、基本に忠実であること」だそうだ。技巧を凝らすのではなく、シンプルであるべき。もし技巧を凝らすならば、それはゲストには見えないことが理想だと語ってくれた。流行りのガストロミーは見た目からして、技巧に溢れているが、彼の料理はただ、純粋に「ゲストに美味しいものを食べさせたい」という愛と情熱にあふれている。また彼の新たな試みとして、シャンパンペアリングというコースがある。アルノー氏のキレのある現代的な料理には、前菜からデザートまで、シャンパンで合わせる、ペアリングに挑戦することをお薦めしたい。こんなにも幅広いテイストが存在するのかと、驚かされるはずだ。ここは、贅沢にアルノー氏の進化を続ける料理と「シャンパンのハシゴ」を楽しんではいかがだろうか。