1. TOP
  2. INTERVIEW
  3. マーク・ヘア氏
INDEX
目次

ザ・スモール・モルディブ・アイランド・カンパニー(The Small Maldives Island Co.)CEO

マーク・ヘア氏

The Small Maldives Island Co.
Mark Hehir(マーク・ヘア氏)

彼が仕掛けるリゾートには、それぞれ異なる魅力が用意されている。
次の美しいストーリーを常に考えているのが、
リゾートのキュレーターであるマーク・ヘア氏である。

CEO, GMそしてキュレーター

マーク・ヘア氏は、ザ・スモール・モルディブ・アイランド・カンパニー(TSMIC)のCEOであり、TSMICが運営する3つモルディブ・リゾートの総支配人(GM)としての地位にある。
マーク氏のもう一つの肩書きは、TSMICの「キュレーター」だ。
もともと「キュレーター」とは、美術館の学芸員を指す。テーマを定めて美術品を集め、わかりやすく展示・説明を行うことをキュレーションと呼んでいる。
昨今の美術館では、企画展でのキュレーションの良し悪しが、観客動員数を大きく左右する。そこで、キュレーターが脚光を浴びるようになってきたのだ。
一方、ホテルにおけるキュレーターやキュレーションは、まだ馴染みが薄いかもしれない。
マーク氏によるホテルにおけるキュレーションとは、いったいどのようなものだろうか。

まったく異なる個性を持つモルディブの3つの島

現在マーク氏がCEOを務めるTSMICは、2012年現会長のマイケル・フリン氏によって設立されたリゾート運営企業である。TSMICでは、現在、「アミラフシ」、「フィノール」を運営し、「フヴァフェンフシ」のリブランドを完了したところだ。
3つのリゾートは全く異なる個性を持つ。各リゾートの詳細については特集を参照いただくとして、ここでは個性の違いを明らかにするための特徴に触れてみよう。
「アミラフシ」は、カップルのみならず家族や友人にとって理想的なリゾートである。「ホーム」と呼ばれる戸建ての客室と、4〜8ベッドルームのレジデンス。これほどまで広大なレジデンスはモルディブには珍しい。というのも、モルディブはハネムーン旅行者を主なターゲットとしてきたからだ。ハネムーンは一度しかないが、家族旅行なら繰り返し訪れてもらえる。アミラフシが家族もターゲットとしているのは、明確なマーク氏の戦略によるものだ。
「フィノール」は、若手世代も楽しめるようにと工夫が凝らされた、フォトジェニックなリゾートだ。かつてのクラシックで優雅な時代のリゾートからヒントを得たというフィノール。他のリゾートと一線を画しているのは、スタイリッシュな景観と「ビーチクラブ感」。
「昼は素晴らしい海や空が広がるが、モルディブはナイトタイムが充実していない。フィノールではエンターテイメントに特に力をいれている」とマーク氏は言う。
60sや70sの影響が色濃い音楽、建築、デザインを通して、ゲストを盛り上げる数多くのエンターテイメントが毎晩繰り広げられ、今までのモルディブのリゾート体験とは異なる過ごし方ができるのだ。

大人だけに許された特別な隠れ家

「フヴァフェンフシ」は、究極のロマンティック・リゾートである。
官能的な魅惑のモルディブの島。全てにプライベートプールを配した44棟のモダンなヴィラ。16歳以上限定の、大人のためだけの最高級リゾートである。
2018年にオープンしてセンセーショナルに話題をさらったのは、Pleasure(楽しみ)を建築で表現したという「PLAYPEN(遊び場)」。変化し続けるニューヨークのロフト・スタイルと、ノスタルジーを感じるネオ・パリジャンのヴィンテージが組み合わさり、個々の家具にもこだわっている。「フヴァフェンフシでは至福の第二章が始まっています。」とマーク氏は言う。
マーク氏にとってもフヴァフェンフシは特別な意味を持つ。TSMIC監修の前にもGMを務めたことがあるからだ。
その頃から、カップルが楽しむことのできるサービスを数多く検討していたが、TSMICの統括下でリニューアルを検討したとき、以前の考えは一切捨て去った。そして改めてリゾートの「誰がゲストか」を考え抜いたのだ。
もっとも美しく清らかな場所。
まるで禅の世界。
マーク氏は熟考の末に、ここを大人だけの特別な隠れ家とすることに決めた。

それぞれのストーリーが仕組まれたアルカディア

3つのリゾートが異なる魅力を放っているのは、コンセプトからその実現までを手がけ、異なる種類のラグジュアリーを纏わせた、マーク氏のキュレーターとしての手腕によるものといえるだろう。際立つ個性は、それぞれ別の島に位置していることも寄与している。独立した島であればこそ、異なる世界観のアルカディアを実現させることができたわけである。各々のリゾートは、ターゲットとするゲストのペルソナが明確に別に設定されているように見える。しかし意外なことに、マーク氏は、「3つのリゾートのゲストを別の人だとは考えていない。」と言う。「同じ人が3つの島を訪れたらよいのです。人の心のありようは多様なのですから。」
マーク氏は、コンセプトづくりとその実現における成功の一端を教えてくれた。「コンセプトをうまく作るには、何か突出したもの、エッジの効いたサービスの方が、結果として息の長いものになる。全ての人に対して全てのことをやろうとすると、結局誰のものでもないものになってしまう。」「フヴァフェンフシ」の大胆な決断は、長年ゲストと接してきた経験からなされたものであり、それなくして今の3つのリゾートの姿はないとマーク氏は断言する。「素晴らしいホスピタリティーやサービスは、人とのふれあいの中から生まれると思います。何よりもまず、お互いの感情の結びつき、つながりが大切なのです。」

心と心が結びつく島へ

マーク氏のリゾートでラグジュアリーなひとときを過ごすためのリコメンデーションを伺った。
「アミラフシでラグジュアリーなひとときを過ごすには、インスピレーションを受ける場所『ジャヴー・スパ』でのピュア・マッサージをぜひ体験してください。しかしヒーローならば、モルディブの水と親しまなければね。アマリのブルーホールでのシュノーケリングもいいですし、季節によってはモルディブに生息するマナティが見られますよ。」
食への欲求は?「まずは、本格日本料理のモダンな水上ダイニング『フィーリング コイ』で満たすのがベストでしょう。世界No1バーテンダー金子道人氏が考案した、日本酒ベースのオリジナルカクテル『フィーリング コイ ブロッサム』もぜひお試しください。」

「フィノールならば、魚とカニのココナッツカレーがお勧めです。しかし何と言っても、フィノールだけの圧倒的でラグジュアリーな体験は、『ビーチ・バブル』のテントの中でまどろむこと。これはモルディブでのラグジュアリーなひと時には欠かせません。」

「フヴァフェンフシでは、世界でただ一つの水中スパ『パール』で癒しの時間をお過ごしください。また、地下のワインセラー、スターライトディナー、ロックディナー、サンドバンクピクニックからクルーズでの朝食まで、実に様々なダイニング体験を楽しんで頂けます。」

ところで、ここ数年の間に、旅行者がリゾートに求めるラグジュアリーの意味が変わってきているとマーク・ヘア氏は言う。
ものではなく、体験やストーリーが重要と考えられるようになってきたからである。何を手に入れられるかではなく、そこで何をするかが問題なのだ。
ゲストのラグジュアリーへの期待が変わってきたことから、どんな人がそこにいるのか、どのようなカルチャーがあるのか、そこで自分はどんな風に感じるだろうか、ということを知りたい人が以前より増えているらしい。
マーク・ヘア氏にとっては、ゲストの期待に応えらえるような「体験」を用意することが何よりも重要になってきている。
では、マーク氏の考えるラグジュアリーとは何か。
「私個人の見解ですが、ラグジュアリーとは、お互いの心と心とが結びつく時間、ぬくもり、理解、謙虚さ、発見、空間が提供されることではないでしょうか。」
まさに旅は誰とどんな空間・時間を過ごすかが重要なのだ。
マーク氏に今後の展望についても聞いてみた。
「それはまだ秘密です。」
今言えることは、マーク氏の哲学、心の中にある真実についてだけだという。
「生活の中の芸術、没入型デザイン・コラボレーション、心と身体のための驚くべき物語を紡ぎたす女神、現代世界クラスのエコロジーな倫理」。何やら謎めいているが、次のアイランド・リゾートの計画は、どうやらすでに頭の中にあるらしい。これまでとはまた違ったゲストのプロフィールを想定した、ラグジュアリーな体験を仕掛ける企みだろうか。モルディブのキュレーターとしてのマーク氏の企みが気になったならば、まんまとその罠に嵌ってみるべきである。さて、まずは誰とどの島からエスケープしようか。

マーク・ヘア氏(Mark Hehir)は、現在ザ・スモール・モルディブ・アイランド・カンパニー(The Small Maldives Island Co.)のCEOであり、モルディブの2つのアイランド・リゾート、アミラフシとフィノールの総支配人(GM)としての顔をもち、フヴァフェンフシの大々的なリブランドを見事に成功させた。
オーストラリアで生まれ育ったマーク氏は、母国オーストラリアだけでなく、ヨーロッパ・アジア・インド洋のホテル・リゾートで30年以上のキャリアを積んできた。
マーク氏は、モルディブのワン&オンリー・リーティラで、効果的かつ革新的な哲学を実践するGMとして成功を収めた。その4年後に、ザ・スモール・モルディブ・アイランド・カンパニーに参画する。
以前にはモルディブだけではなくアジアのさまざまなアナンタラのホテルやリゾートで働いたのちに、パーアキューム ホテル&リゾートのフヴァフェンフシや、モルディブヒルトン ランガリ(現在のコンラッド・モルディブ)のオープニングにも携わってきた。
ゲストの要望に、スタッフ誰もが応えられるよう常に準備しておくべき、というのがマーク・ヘア氏の信条だ。彼自身もまた、言葉だけでなく行動することでスタッフにインスピレーションを与えており、誠意と想いがあれば、誰もが行動することができると信じているのだ。

INFORMATION
Huvafen Fushi、FINOLHU、Amilla Fushi
INDEX
目次
MAGAZINE
電子書籍
2020 WINTER
- Feel in Nature
- Luxury Lodge
- Okinawa Time
- Tokyo Uodate
電子書籍はこちらから